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【小説】『平成のエラリー・クイーン』について語りたい

 


どーもこんちは、まき乙です。

部屋の掃除は洗濯機を回すところから始めるのですが、部屋を片付けていると本当に洗濯したかった服が出てきて悲しくなります。


洗濯機回してからじゃないと、掃除するスイッチが入らない。

困ったものです(他人事感)。




……管理人まき乙のそんな阿呆な日常はさておき。


青崎有吾さん という作家さんをご存知でしょうか。

推理小説を読む方なら、すぐにピンとくるかもしれません。



2012年に、東京創元社主催の新人文学賞、『鮎川哲也賞』を受賞した推理小説家の方です。

その異名は『平成のエラリー・クイーン



もう異名があるってだけでカッコイイのに、異名そのものもカッコイイとか。

そんな青崎先生の作品である『裏染天馬シリーズ』について、今日は語ります!


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青崎有吾先生による、『裏染天馬シリーズ』文庫。現在、全四作が出ています。


エラリー・クイーンって誰?

 


まずここですよね。笑


推理小説読まない人はたぶん、まず知らない。

管理人はけっこう推理小説読むほうだと自負しているのですが、実は数年前までまったく知りませんでした←


エラリー・クイーンアメリカの推理小説です。

従兄弟同士である二人の男性が、小説を書くときに使った筆名、ペンネームってやつです。


二人で小説書いてたんですね。



なお、この二人の書いた小説には推理モノとあって名探偵が出てくるのですが、その名前がエラリー・クイーン

自分たちのペンネームを主役に使うって、自伝みたいで面白いですね。

……いや、逆に登場人物名をペンネームにしたのかな? わかんないけど。


ロジカルな推理に定評があり、管理人も「国名シリーズ」と呼ばれるうちの第一作『ローマ帽子の謎』を数カ月前に買ったのですが、今は部屋の隅にある積み本の山の一部と化しています……(震え声)。



読書が……してぇ……!!!


 
とまぁ、そんな推理小説の歴史に残る傑作を書いた方なのですよ、エラリー・クイーンというのは。


そして、そんな小説家さんを彷彿とさせると言われるような平成生まれの作家が日本にいるってやばくないですか?

え、日本すごくない?(語彙力)


出会い方が独特でした。

 


青崎先生のデビュー作は、『体育館の殺人』という長編推理小説です。

どっかのサイトで読んだんですが、先生ご本人はこれをシリーズ化させるつもりはなかったみたいなんですよね。



でもねぇ……あれは流行るって。笑


結局今は短編集も含めて四作を発表していて、主役の探偵の名前を取って『裏染天馬(うらぞめてんま)シリーズ』と呼ばれています。



ちなみに管理人が初めて『体育館の殺人』のハードカバーを本屋で見かけたのも、2012年だったかな。


今思えば、あれは先生が賞をとった直後のタイミングだったんですねぇ……。

大量に平積みされてたわけですよ。


当時は今よりも速読が出来たので、面白くて三分の一くらい一気に立ち読みしてしまったのをすごく覚えています……本屋さんごめんなさい。


ちなみに当時はお金のない学生の身だったので、千円を超えるハードカバー本は買えませんでした……本屋さんマジでごめんなさい。



そのあと「体育館で殺人事件が起きるすげー面白い小説あったなー」ということは覚えていたのですが、肝心の作者名とタイトルを忘れてしまい(アホだろ)、そのハードカバー本の存在も記憶の彼方へ……。



しかしですよ。


その3、4年後くらいかな?

いつもの如く本屋を徘徊していてふと、面白そうだなぁと手に取って、いつものようにパラ読みした文庫本。


「……あれ、これ読んだことあるぞ……」


そう、それが裏染天馬くんとの再会だったわけです。


手に取ってからレジに向かうまでの最速記録を叩き出しましたね、あの瞬間は。



つーかいまだに思うんだが、奇跡かよ


なかなかないよ、本屋でそういう奇跡の再会。



『裏染天馬シリーズ』のここが面白い!

 


でもって、家でじっくり読んでみたらこれがまた寝不足になるほど面白い


これ、個人的に青崎先生の作品の評価するべき点だと思うんですけど、事件のトリックが奇抜じゃないんですよ。いい意味で。


たまにあるじゃないですか。

ものっそいブッ飛んだ、「人殺すのにかかるコストやばくないそれ?」みたいなトリック。


そういうんじゃないんです。


死因も凶器も死亡推定時刻も明白、目撃者が何人もいるはずなのに、なぜか犯人だけ見当たらない。

というか、現場は密室状態。


事件発生直後のパートは、クエスチョンマークの乱舞ですね。



そして推理パート。


正直、推理パートはけっこう力入れて読まないと、恐ろしいほど頭の切れるアニメオタクの天馬くんに置いてけぼりを食らいます。

ただでさえ意味の分からない謎だらけなのに、天馬くんの言動のクセが強すぎてますます混乱します。


読者が謎解きに集中しすぎないように、心地よく振り回してくれる感じでしょうか。笑



こちらの混乱がおそらくピークに達したところで、名探偵による謎解きパート。


それまで蓄積されてきた「なぜ?」「どうやって?」が、まったく無理のない理論で氷解していくのは、読んでて爽快というか、悔しいというか。


「それ頑張れば読者も気づけるやつじゃん!」みたいな証拠の描写が、現場検証のときにしっかりされているのに、謎解きパートまで気づけないんだからもうめちゃくちゃ悔しいですよ!笑


どれくらい悔しいかって言われれば、読み終わって即1ページ目に戻るくらいには悔しいですよ!


登場人物のさり気なーい仕草が、謎解きで急に意味を持ちだすあの感じ、たまりませんねぇぇええ。


推理小説を読んでスカッとした経験は、今のところこのシリーズ以外では無いですねー。




しかし!

それだけではただの「ポスト・エラリー」。


青崎先生のすごさはキャラクター造形にもあるんじゃないかと、思うわけなのです。



例えば、探偵役を担う風ヶ丘高校二年生・裏染天馬


探偵役と言えば、チョイチョイ変わった人柄ではあるものの、一応協力的に事件を解決へ導いてくれるイメージあるじゃないですか。


天馬くんに限って、それはないです。笑


アニメオタクで趣味はサブカル一色、休みの日ともなれば自分の部屋から一歩も出ない。

一年後輩であるワトソン的立ち位置の主人公・柚乃(ゆの)ちゃんをして、「ダメ人間」と言わしめる体たらく。


ちなみに一作目の冒頭、天馬くんが柚乃ちゃんに、趣味を問いただされて返答した内容は個人的には大好きです。

わかる、わかるよ。


なんて言ったのかは、ぜひ読んで確かめてほしい。笑笑

そして脱力してほしい。



その反面、殺人犯を許さない感情が人並みかそれ以上にあったり、自分の過去を隠そうとしたり、何が琴線かはわからないけど、興味をもったら積極的に捜査を始めたり。


浮世離れするレベルで引きこもり気味の探偵なら、フィクションには結構な数いそうでしょ。

でも、天馬くんにはたまに描写される人間臭さ、仄暗さとか得体の知れなさがあるっていうか。


なんというかすごく、リアルの世界にいそうでいない高校生なんですよね(伝わるかなーコレ)。


もちろん天馬くん以外にも、なかなかクセの強い登場人物がいっぱいいます。


いつも明るくハイテンションな(でもってちょっと騒々しい)新聞部部長とか。

高校生'sに振り回される県警刑事のコンビとか。

ショートカットの似合う健康美人な卓球部部長に、好事家の所轄刑事。


そういう描写がすごく緻密だと思ったら、青崎先生、推理小説を書かれる前はライトノベル系の賞に応募してたんだとか。


……そりゃあ呼ばれるわ、『平成のエラリー・クイーン』って。


ライトノベルが台頭し始めたのって、たしか1990年代も後半の頃でしたよね?

全然余裕で『平成』じゃん。


ラノベ並みのキャラクター造形と、爽快感すら覚えるほどのプロットですよ……?




そんなもん、尊敬する以外に抱くべき感情ありますかね!?


管理人は今、非常にワクワクしています。

 


というのも、そんな天才(もうストレートに言っちゃうぞ)青崎有吾先生の短編集『ノッキンオン・ロックドドア』の文庫が、来たる3月8日に発売予定だからです!!!
(出版社の回し者じゃないよ)


絶対買う。

普段「この作家さんの本だから」という理由で本を買うことはほぼないまき乙ですが、なぜか青崎先生の作品には全幅の信頼を置いています()。


先生ご本人の「文庫版の書影が出てました」っていうツイート拝見したんですが、もうテンション振り切っちゃいますよね。


天馬くんじゃないけど、「ひゃほうっ」って叫んでベッドの上で飛び上がれます。

楽しみの極みです。


とりあえず8日までは死ねないことと、あとついでに8日の記事の内容も決まりましたね!




さて記事を書いていたら『体育館』が猛烈に読みたくなってきたので、今日はここらで打ち止めにしようと思います。

何度読んでも面白い。

本って素晴らしいね(積み本の山からそーっと目を逸らしながら)。


本は買ったらきちんと読みましょう。


では、本日はこれまで。